徒然

日、作業中に声をかけられ、その余りに端整な顔立ちと裏腹に隙を感じさせる目付きに気を惹かれ、職務遂行の義務を放棄しかけていたところ、相手が『猫の宅急便はどこか?』と聞くので、ジブリ作品にそうしたタイトルのアニメが存在する前提で応待を続けてしまった。またべつのとき、その日はレディオヘッドのベスト盤が入荷した日だった。大柄な黒人男性がブラックミュージックのコーナーを物色したあとでおもむろにこちらへやってきて、平然を装いながらも自分のつたない英語力を総結集し第一声を考えつつ内心どぎまぎしている私にむかい、『らじおへっどアル??』と明らかに関西人の友達がいる留学生独特のイントネーションで問いかけてきたので、びっくりした私は思わず『ない』といってしまった。


どちらのエピソードも、営利目的の客商売としては甚だ落第だろう。けれども、“猫の恩返し”と“魔女の宅急便”を並べて薦めても彼女は腹を立てただけだろうし、“Radio”を“ラジオ”と発音する和製英語になれた我々であっても、オックスフォード出身の5人組を“ラジオヘッド”とは呼ばないわけで、あのとき私が何も言わずレディオヘッドを渡してやっていれば、彼はその関西人の友達のまえで一生“らじおへっど”とのたまっていたかもしれない。これはこれでありなのだと思う。




The Troubadours / Gimme Love



M83 / Graveyard Girl



Gotye / Learnalilgivinanlovin



Dead Trees / Shelter