国破れて山河あり。そして私の雨は未だあがらず。心配しないでほしい。私はそれでも精気を奪われたわけではないから。荷物を下ろすための旅はここまで。これからは本当に必要なものだけを探しに行く。やはりそのために、全ての物事が収束していたのだ。 もう…

駅を出ると小雨。時間はちょうど昼食時。四方八方から大人が集まり、わずかな席と時間を取り合う。彼らとは逆方向に走り、玄関に着いた。通された場所には椅子があり、先客が1人。見るからに感じが良く気立てもいい。そんな男だ。続いてもう1人が到着し、傘…

ペンを置く。もう考え事をするのはよそうと思った。至らない部分はまだある。解消出来ていない問題にも気付いてはいる。ただそれは本当に一員となってから気にすればいいかと。それよりもやっと手に入れた好機なのだ、出来れば右足から家をでる習慣も捨てた…

今日、休日の過ごし方を知った。ありふれていて、誰もが知っている休日だ。積もる話題と少しばかりの酒。場違いな雨だけがかすかに私達を現実に留め、それでも私達はそんな現実を煙に巻いた。 時間が経ち、散り散りに細かくなっていく炭のかけらは私達に似て…

信頼関係とはこうして生まれるのだろう。西日がひどく差し込む中でそう考えた。口の中はいつものように乾き、分厚い背広の内側には汗すら感じた。だが、目の前の光景だけはいつもと少しちがう。今せっせと動いているその人の手は、出会ったばかりの私に欠け…